国交省による『粉飾の手口』

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元記事:山根治blog「 粉飾された2兆円 -号外3」
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粉飾された2兆円 -号外3 (2008-08-11)

 私達松江市民の多くが疑問を抱いてきた「大橋川改修事業」が、一転して中止に向かって動き出したようです。
 私がこのブログで取り上げている経済効果(費用便益分析のことです)の大幅な水増しトリックに加えて、その他にもいくつもの偽りが明らかになるに及んで、国交省だけでなく一緒になってインチキ工事を敢行しようとしてきた島根県と松江市もその言動が次第に怪しくなり、ついには支離滅裂になってきました。インチキを糊塗(こと)しきれなくなったからでしょうか、破れかぶれの開き直りとも受け取れる挙に出たのが、号外-2でお伝えした「平成19年度 再評価項目調書」でした。
 5年前に明らかにされた前回の調書と比較して、余りの変りように息を呑んだのは果して私だけだったのでしょうか。「比較検討資料」をご覧になれば分かるように、内容が変ったのは一つや二つではありません。しかも、国交省は重要な点について一切の理由説明を付けることなく、平然と変えているのです。もはや、驚きを通り越して呆れるばかりです。

 まず第一に、肝心の「大橋川改修事業」が、「事業名」をはじめとして調書の中からキレイに消されていることです。その理由について国交省の担当者に問い合わせたところ、
「これまでは個別公共事業として扱ってきたが、このたびから一般河川改修事業として扱うことになった。従って、今後は全体の“斐伊川水系治水事業”の中の一つとして進めていく。」
と、まるで言葉遊びのような回答が返ってきましたので、私は、
「では、大橋川改修事業をこれまで個別公共事業として扱ってきたのは誤りであったのか、あるいは誤りではないが何か特別の事情があって扱いが変ったのか、つまり、変更の理由は何か?」
と重ねて問いかけたところ、絶句した挙句、
「即答はできないので、検討の上で返事する。」
とのこと。何をどのように検討するというのでしょうか。
 いずれにせよ、この回答を得た上で、これまで国交省が進めてきた「大橋川改修事業」の実態と照らし合わせて、その整合性を検証する予定です。

 第二に、「大橋川改修事業」の事業期間の終期が、つい最近まで平成20年代前半となっていたのが、平成50年代予定と、ナント30年も延びていることです。これは、この事業が新たにスタートすると見ても差しつかえないことです。
 ところが、国交省は「大橋川改修事業」は新規事業ではなく、あくまで継続事業であると言い張っています。未着工のままで30年が経過し、しかもその間にはこの工事の大前提となっていた宍道湖・中海の淡水化・干拓工事が中止に追い込まれたり、河川法の大幅な改正があったりして、これらを受ける形で、全く新しい「斐伊川水系河川整備基本方針」(平成14年4月)が制定されているにも拘らず、なお30年前からの継続事業であると強弁しているのです。国交省が何を言おうとしているのか私にはよく分かりません。

 第三に、大橋川改修については、ダムと放水路とセットになって既に決められていること(これがいわゆる“三点セット”です)であるとされてきたことが、大幅に変化したことです。つまり、平成19年度の「調書」からは大橋川改修事業の文言と共に三点セットの文言もスッポリと削除されているのです。
 ところが、“三点セット”の主張を維持するためでしょうが、平成19年度の「調書」では、これまでとは全く異なる“三点セット”なるものが登場してきました。子供騙しもいいところです。
 つまり、これまで国交省が三点セットと言い張っていたのは、
  1. 2つのダム
  2. 放水路
  3. 大橋川改修
のことでしたが、これまた何の説明も加えずに、
  1. 上流の2つのダム
  2. 中流の放水路と斐伊川本川の改修
  3. 下流の大橋川改修と中海・宍道湖の湖岸堤整備
と変更しているのです。よほど慌てて直したためでしょうか、神戸川の改修(これは2.に入るべきものです)と境水道の改修(これは3.に入るべきものです)の2つが漏れている始末です。平成14年度の「調書」では全く記述がなく平成19年度の「調書」で突然出てきたものが「斐伊川本川の改修」と「中海・宍道湖の湖岸堤整備」で、14年・19年共に全く記述がないものが「境水道の改修」です。
 これまで国交省が大橋川改修を推し進めるための強力な拠(よりどころ)にしてきたのが、三点セットのトリックでしたので、三点セットの内容の変更は、自らトリックであることを自白したに等しいことを意味します。
 なかでも、上記の3.の中に、中海の湖岸堤の整備が入ってきたことは格別の意味合いを持っています。大橋川改修がこの30年の間工事に着手できなかった理由の一つは、大橋川改修について隣の鳥取県側の同意が得られなかったからですが、松江市側が30年前に仮に同意していたにせよ(もちろん、当時の松江市は、上・中・下流一体となった斐伊川水系全体の治水計画に総論で同意しただけのことで、大橋川改修という各論で同意した訳ではありません)、鳥取県がかかわる中海の湖岸堤が取り残されていた以上、1.2.3.をセットにして取り決めがなされたことにはならないからです。偽りの三点セットを振りかざして、松江市民を騙し続けてきた、国交省の論理破綻は明白です。

 「調書」から看取できる上記の3点以外でも、水系全体の治水計画の大前提となるべき高水(たかみず。洪水のことです)の見込数値が大幅にカサ上げされている(らしい)ことも明らかになっています。つまり、基本高水を5,100立米/秒として、ダム、放水路、河川改修の事業が組み立てられているのですが、30年前に、それまでの3,600立米/秒から1,500立米/秒も一気にカサ上げされた事実があります。その経緯が極めて不自然かつ不透明なもので、それを算出する根拠の一つとされた明治以来の洪水実績が改ざんされたり、歪曲されている(らしい)のです。
 国交省としては、あれやこれやのインチキがなんとか白日のもとに曝されないうちに、松江市民が大騒ぎしている大橋川改修だけでも撤収しようとしているのかもしれません。役人達がなんとか自分達の責任を逃れ、これまで行ってきたインチキを取り繕おうとして右往左往している様子が眼に見えるようですね。

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。
“真剣に 見直す時期と いつも言う” -宝塚、だてこき。
(毎日新聞、平成20年8月9日号より)

(役人の常套句、百年河清を待つが如し。)


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